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君になりたい

consideration monologue

パンケーキにナイフをいれながら、「あーそれこないだも聞いた」と思った。
いつ聞いたんだっけ。肉をひっくり返してるときだったっけ。口に広がったバターのしょっぱさで思い出す。
そうだ、マンゴー白玉ココナッツっていうてんこもりのデザートをつついてるときに聞いたんだった。
「最近、うみさん人気でてきたんすよ」って。

その予兆はどこで感じてたのか、あんまり覚えていない。
世間がざわつくとか、「見つかった」というほどではない変化。ただ、なんとなく風向きの変化を感じていたのは確か。だからそういわれた反応も「あーそうだろうねえ」だった。内心は、もっといろいろかんがえていたのだけど。

うみさんのこと。
じわじわひたひた、水が満ちるみたいに人気を広げている人。
今までは人気がなかったっていうより、めちゃくちゃ濃いメンツの中では上手く前に出てこれていない子っていう印象があった。もちろん存在感も、無視できないオーラも持ち合わせてるんだけれどもそれはトラジャっていう狭い箱庭の中での話で。リアル「よりどりみどりで迷っちゃう」状態のジャニーズJrの中では、まあなかなか、見つけ出しづらいよねっていうのもその通りで。
じゃあ、「あーそうだろうねえ」の根拠はどこかって考えたら、多分全部ステージにあったんだと思う。
2年前のクリエ、その後のプレゾン。担当が別にある身の割にはうみさんを見る機会は少なくはなかった。
トラジャには視線泥棒がたくさんいて、みんな思い思いの方法で視線を奪っていくわけだけれども、うみさんの奪い方は少し違った。
ダンスの一瞬の間。ふと落ちるその変な隙間。そこでうみさんはしまった!って顔をする。本当に一瞬、目がぱちっと開く。あ、間違えた。テンポが遅れてる。ぱっと泳ぐ視線。振り落ちしたんじゃないかこの子、と思う。それはすぐさま確信に変わる。宮近とも、しーくんとも、朝日とも違う動きをしていて。しれっとしてればいいのに、腰を落とすときに一人だけ落ちていない。ぽかっと取り残された不自然さの真ん中で、一人「しまった!」って顔をしていた。

不快だとは思わないのが不思議だった。気を抜いてるわけじゃないことがわかったからだと思う。
ふざけてて、手を抜いて踊ってたら腹も立つんだけれど、そんなことないっていうのがなぜかわかった。それはもう感覚的なものだから、言葉を尽くしても足りないんだけれど。
ここでまた間違えた、とかそんな楽しみ方をする気にもなれなかった。口をへの字にして、ぎゅっと一瞬強張る。がんばれよ!って声をかけたくなる表情。
かと思えば、すごく浅はかな部分もある。ニッコニコと笑ってステージから客席を見回すというのに、そのほんの数分後、激しいダンスの曲中でゾンビみたいな、生気のない顔で踊ってて。
えええそんな顔する?!マジか?!って、逆におかしかった。だって、これからすっごいしんどいダンスが待ち構えていたら、わたしだったらちょっと省エネになってしまう。顔がこわばってしまうかもしれない。
まるで、8/30まで宿題をしていなかった小学生のような、お小遣いをもらったその日に全部ぱーっと使い切っちゃうような浅はかさ。かわいいなあ、この子。この隙の多さは、男の子特有のものだ。

なんともいえない子だなあと思う。
冷静に考えてみれば、彼の境遇っていつも「ちょっと足りない」のだ。ドラマに一人だけ呼ばれなかったり、なかなかみんなが出ている番組に出れなかったり。
けど、広がった。彼の人気の出方はなんとなく、蒔いた種が開いたかのような感じ。
それは洗練されていくルックスかもしれないし、段々と「かれの楽しみ方」がわかってきたおたくのモードかもしれない。

今、人間(というか日本人)が一日に触れる情報量は、インターネットの台頭によって爆発的に増えている。けれど、それを処理できる量は今も昔も変わっていないんだそうだ。
たぶん昔よりも人の趣味は多様化したし、暇つぶしだってたくさんある。
むかしのアイドルが栄華を誇ったのは、娯楽が少なかったからというのも言える。
いま暇つぶしをしようと考えたとき、たくさんの選択肢がある。
その中でアイドルを、ジャニーズを、その中でさらにジュニアの、中村海人という彼に突き当たるまで、いったいどれだけの選択があるだろう?
カメラがフォーカスをかけるみたいに、ぼやけたピントがしっかり合うその瞬間。
うみさんに関しては、じわじわとした認知がきっかけだったのではないか。
遭遇が出てみれば「あと一人誰かいた」の「誰か」に括られる彼。
なのにエピソードはひとつひとつキャッチー*1で、中村海人の楽しみ方は、思うにインターネットで爆発したのだと思う。
狭い世界のファンコミュニティで、エピソードが悠々と泳いでいく。現場にいったときに「あの子!」と思った人もいたんじゃないだろうか。
そもそもはちいさな顔に長い手足。すこしふくよかだった頬も、成長と共に精悍になっていった。

「見つかり方」ってきっと人それぞれで、たとえば発言がいちいちおかしい*2とか、伝え聞くエピソードがやばい*3とか、たくさんたくさんあるんだと思うんだけれど、うみさんの場合「きっかけ」というお膳立てを活かす実力を本人が身に着けたのかなあと、そんなことを思った。

まあそんなこといってても一番はうみさんの現場求心力の強さなんだと思うんだけれどもね…つい目が行っちゃうもんなあ。
「見つけた」感を刺激する、フェチズムに溢れた男の子の進撃の物語。

*1:おいなりさんもそうだし、あの危うい前髪もそう

*2:健人さんの握手会芸

*3:戸塚さんの奇行